神戸花くま法律事務所

コラム

2019.09.11

定期借家にご用心

 賃貸で家や店舗を借りる際の建物賃貸借契約には、大きく、普通建物賃貸借契約(普通借家)と定期建物賃貸借契約(定期借家)があります。いずれも借地借家法に定めがあります。

 ほとんどの場合は普通建物賃貸借契約で、1年や2年毎に更新します。家主(大家)は、正当な理由がなければ更新拒絶はできないため、借主の居住や店舗営業への保護が比較的厚いといえます。

 一方、件数は少なく認知度は低いのですが、定期建物賃貸借契約という契約があります。これは、契約時点で、借主が建物を利用できる期間を定め、その期間が満了したら貸主が再契約に同意しない限り、契約は終了となり明け渡さなくてはいけないという契約です。原則は契約が終了してしまうという点が、契約が更新により継続するのが原則である普通建物賃貸借契約とは、大きく異なります。

 定期建物賃貸借契約は普通賃貸借契約と違い、借りる側にとっては不利益が大きい契約ですので、法は厳格な要件を定めており、契約にあたっては、事前に書面を交付した上で説明をすることを家主に求めています。しかし、実際には、家主がきちんと説明をしていない場合もあり、そんなことは知らなかったと後にトラブルになるケースが多くあります。

 もともと定期建物賃貸借契約は、賃借人保護の観点から多くの問題点が指摘されていたにも関わらず、家主側の要望で制定された制度ですので、借主にとっては十分注意が必要です。

 定期建物賃貸借は、現在でも件数や認知度は非常に低いのですが、それゆえ契約トラブルが生じ得ます。賃貸借契約を締結する際は、家賃や間取りだけでなく、この点にも十分にご注意下さい。

(弁護士 與語信也)

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