コラム
2019.08.28
ハラスメント規制法が成立しました
2019年5月29日,参議院本会議で「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律」が可決成立し,わが国で初めてパワハラの規制が設けられました(施行時期は未定ですが,早ければ大企業が2020年4月,中小企業が2022年4月です)。
改正法では,①優越的な関係を背景に,②業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により,③就業環境を害するというパワハラの三つの要件が明記されました。
しかしながら,職場では業務が円滑に遂行し,目標を達成するために,上司が部下に対して,注意,指導することは上司の役目でもあります。そのために上司が部下を叱責することもあります。このような業務指導の一環として行われることが,「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」場合に初めてパワハラと言えることになりますが,実際には「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」か否かの判断は非常に難しく,今後,国がガイドラインを出すことになっています。
また,パワハラに対しては慰謝料など損害賠償請求が可能ですが,改正法によりセクハラやマタハラと同様に,都道府県労働局長による助言・指導や「あっせん」に加えて,紛争調整委員会による「調停」ができることになりました。
しかし,改正法にはパワハラを禁止する規定や罰則が設けられていないことや第三者(顧客・サービス提供者・患者など)からのハラスメントの防止・除去については何の規制も設けていないことなど,同時期に成立したILOハラスメント条約に比べると不十分な点が多くあります。
いずれにしても前記のとおり,パワハラに該当するか否かの判断は微妙です。その解決法も含めて弁護士にご相談されることをお勧めします。
(寄稿)弁護士法人神戸あじさい法律事務所 弁護士 増田正幸