コラム
2019.07.05
JFC問題について
皆様はJFC(Japanese-Filipino Children=日本人とフィリピン人の間に生まれた子ども)問題をご存じでしょうか。
JFC問題とは、日本人男性とフィリピン人女性との間に生まれた子どもが、父親から遺棄されるなどして、経済的・社会的・精神的に様々な問題を抱えてしまうという問題です。
1980年代から、フィリピンでの雇用機会の乏しさから、日本へ働きに来るフィリピン人女性が増加しました。それに伴い、日本人男性とフィリピン人女性との間に産まれる子どもが増加しました。
この中には、例えば、日本人男性と婚姻関係にないフィリピン人女性が帰国して子どもを出産し、出産後に様々な理由で関係が破たんしたり、突然日本人男性との連絡が途絶えたりしたが、認知もされず、何の法的サポートもないまま母子家庭として経済的問題等を抱えながら生活しているケースがあります。この場合、日本人男性に対し、認知請求を行う方法がありますが、適切な相談先がわからず、その方法さえ知らない方が多くいます。法的手続を取れても、父が行方不明であったり、認知拒否するなどして、手続がスムーズに行かない場合も多くあるとのことです。
また、両親が結婚していても、何らかの理由(出生届を出してもらえない、両親が国籍留保の手続きを知らないなどの理由)から、出生後3ヶ月以内に国籍留保をしないまま成人し、国籍取得が困難となったケースもあります。成人するまでであれば、国籍再取得の道は残されていますが、成人してしまった場合、国籍再取得は極めて困難となります。
このような状況におかれたJFCは、幼少期から、親を知り、親から養育を受ける権利、父親の文化を直接学ぶ機会さえも奪われているケースが多々あります。
当事務所では、JFC問題を複数取り扱っておりますが、事案に接するたび、問題の根深さを感じております。
今後、現在の制度の問題点を改善し、JFCが、十分な法的サポートを受け、一人の人間として尊厳を失わず生きていける社会が必要であると考えます。
(弁護士 清田美夏)