健康保険の使用について

Q  交通事故の治療に健康保険を使ったほうがよいでしょうか。

A  わが国には国民皆保険制度がありますので、病気やけがをした場合は健康保険を使って医療機関で受診すれば、患者は実際の医療費の2〜3割を負担するだけで済みます。 医療機関は社会保険診療報酬支払基金や国保連合会に残りの医療費(7〜8割)を請求することになります。

健康保険を使った場合、あなたが治療を受けた医療機関(保険診療機関)は実施した診療内容にもとづき、これを点数化した診療報酬明細書(レセプト)を作成して診療報酬を請求することになります。診療報酬点数は厚生労働省が定めて告示しています(健康保険法76条)。(1点=10円で計算されます)。但し、保険診療には非常に細かい規定があり、各疾患に応じて検査や治療内容等はその制限内で行われなければなりません。

これに対し、健康保険を使わない場合は、自由診療といって医療機関と患者が自由に個別の契約を行い、その契約に基づいて診療が行われることになります。この場合の治療費は全額患者の自己負担となります。「自由」という名称のとおり、治療費(初・再診料その他を含む)はその医療機関が独自に決めることができます(交通事故の場合、1点=12〜20円としていることが多い)し、治療の方法や処方する薬にも保険診療のような制約はありません。

したがって、全く同じ治療をしてもらっても、医療機関が受け取る報酬額は自由診療の方が保険診療よりも高額になります。また医療機関は社会保険診療報酬支払基金ないし国保連合会に報酬を請求する手間もかかりません。

交通事故による負傷の治療費は損害保険により支払われることが多いので、その場合は自由診療によることが当然視され、医療機関の側は治療費を当たり前のように自由診療として保険会社に請求し、被害者は治療費の額には関心を払わないことが多いのです。

しかし、本来は保険診療と自由診療のいずれにするかは患者が任意に選ぶことになっているのです。

厚生労働省も、昭和43(1968)年10月に課長通知を出して、「自動車による保険事故も一般の保険事故と何ら変りがなく、保険給付の対象となるものであるので、この点について誤解のないよう住民、医療機関等に周知を図るとともに、保険者が被保険者に対して十分理解させるように指導されたい」と注意を喚起しています(昭和43年10月12日保険発第106号「健康保険及び国民健康保険の自動車損害賠償責任保険等に対する求償事務の取扱いについて」)。

なお、保険診療の場合は、被害者が窓口で2〜3割の自己負担分をいったん支払った後に、これを損害として加害者(保険会社)に請求しなければなりませんが、保険診療を使ったからといって被害者側の負担が増えることにはなりません。

それでは、健康保険を使った方がよいのか否かについて考えてみましょう。

事故の発生について被害者側にも落ち度がある場合があり、その場合は「過失相殺」といって被害者の落ち度の内容・程度を考慮して賠償額が減額されることがあります。損害保険会社が任意保険によって治療費を支払う場合には過失割合に応じて支払います。

たとえば、治療費の総額が自由診療によると100万円、健康保険によると50万円になり、被害者にも40%の過失がある場合、損害保険会社が支払う治療費(自由診療)は60万円(100万円×60%)となり、40万円が被害者の自己負担となります。

これに対して、健康保険を使うと、被害者が窓口で支払う金額(3割負担の場合)は15万円(50万円×30%)になり、かつ自己負担した15万円の内9万円(15万円×60%)が後に損害保険会社から支払われるので、最終的な被害者の自己負担額は6万円になって、自由診療の場合よりはるかに負担が少なくなります。

また、加害者が不明であったり、加害者が任意保険に加入していないような場合には自賠責保険により治療費が支払われることになりますが、この場合、自由診療によると治療費が割高となるので自賠責保険の支払限度額120万円はたちまち治療費に費やされてしまうので、保険診療にすべきであるということになります。

なお、保険診療の場合は、「第三者行為による傷病届」の提出が必要なので、手続きが煩雑になりますが、加害者の加入している任意保険によっては「第三者行為による傷病届」の作成も保険会社がサポートしてくれることがあります)。

交通事故

交通事故発生から解決までの流れ

賠償を請求できる損害の種類

後遺症が出た場合

仮渡金請求について

健康保険の使用について

通勤途上の交通事故について