事務所ニュース

◆バックナンバー

2009年


裁判員制度に思うこと

2009夏号事務所ニュースより

弁護士 増田正幸

いよいよ裁判員制度が始まります。兵庫県では9月初めに初めての裁判員裁判が予定されています。刑事裁判の8割近くは国選弁護事件です。国選弁護事件は順番にあてがわれるので弁護士は事件を選べません。私たち弁護士もいつ裁判員裁判事件が当てられるのか戦々恐々です。

被疑者は通常は逮捕されると勾留(留置場に10日ないし20日身柄拘束されること)されて厳しい取り調べを受け、検察官により起訴(裁判にかけること)されますが、従来は、一部の重大犯罪を除いて、国選弁護人は起訴された被告人にだけ付けられていました。しかし、勾留中に密室で自白を強要され、嘘の自白をしたことが誤った裁判の最大の原因です。起訴前の取調べの段階から弁護人が付かないと意味がありません。そこで、今年の5月21日から勾留された被疑者の大部分に国選弁護人が付せられることになりました。国選弁護人が付く事件が従来の10倍になり、弁護士は悲鳴をあげています。最近、刑事弁護人に対する風当たりが強いですが、多くの弁護士は誤った裁判を許してはならないという一念で頑張っているのです。


不就学児童を救う 不安定なブラジル人雇用是正を支援

2009夏号事務所ニュースより

弁護士 和田壮史

私は、現在、全国の同期を中心に「在日ブラジル人等の不就学児をなくす若手弁護士の会」という会を作り活動しています。

ブラジル人学校は、ブラジルでの教育制度に即して授業を行っていますが、その多くが認可を受けていません。したがって、基本的に親からの授業料のみで成り立っています。

他方、子ども達の親である日系ブラジル人は、多くが非正規雇用で働いていました。しかし、現在の雇用不安の中で、解雇や雇止めを受けて失職しています。その結果、親たちは授業料を納付できず、学校は今、存立の危機に立たされています。

私達の具体的な活動は、1.短期的活動として、不就学児童の実態調査をおこない、実態を把握すること。2.中長期的には不就学児童が無くなるような諸制度の実現をはかること、です。当面は神奈川・岐阜・滋賀で協力してくれている3つの学校を中心に支援をおこなっていこうと考えています。私は主に滋賀の学校支援に携わっています。

ところで、実際に学校に行ってみると、弁護士に法律相談をしたいという人達がたくさんいました。そこで、神奈川と滋賀で相談会を開き、受任すべき事件は受任して、解決を図ることになりました。滋賀に通うのはなかなか負担が大きいのですが、滋賀の弁護士労働組合その他の団体も協力して下さっています。皆さんのご協力を仰ぎながら、出来るところから取り組んでいきたいと思っております。

一方で、当初の目的である不就学児の調査や、学校支援の活動も引き続きおこなっていきたいと考えています。

なお、この活動により、信頼できる仲間が全国に出来ました。日々の業務についての疑問点があった場合等に、素早く電話やメールで相談できる仲間が全国にいるのは非常に心強く、私自身のスキルの向上にも役立っていると実感しています。


事件報告 犯罪被害者に関する法律改定について

2009夏号事務所ニュースより

弁護士 瀬川嘉章

裁判員裁判が始まりましたが、実は犯罪被害者に関しても大きな法律改正がなされています。従来の犯罪の被害者は、事件の当事者であるにもかかわらず刑事裁判に主体的に参加することはできませんでした。また加害者への損害賠償請求については、自ら民事裁判を提起する必要があり多大な負担を余儀なくされていました。

昨年12月から、生命・身体・自由に対する一定の重大犯罪(自動車運転致死傷罪などの過失犯も含まれます)については、被害者が刑事裁判に参加し、裁判所の許可を得て、証人または被告人自身に対して質問し、また心情のみならず「事実または法律の適用」に関する意見を述べることができるようになりました(被害者参加制度)。また、同様の犯罪(ただし自動車運転致死傷罪等過失犯は含まれません)について、有罪判決を言い渡した刑事裁判所において損害賠償請求の審理をする制度が設けられました(損害賠償命令制度)。

特に被害者参加制度に対しては刑事裁判の本質に変更を加えるものであるとの議論が大いにあるところですが、これらの各制度により被害者の立場が尊重され、また保護されることになりました。


事件報告 レッドパージ訴訟とは?

2009夏号事務所ニュースより

弁護士 佐伯雄三

レッドパージとは何か、ご存じでしょうか。戦後の占領下で、「連合国最高司令官」の指令により、共産党員やその同調者が官庁等や企業から追放・解雇等排除されたことを指します。今から50年以上も前のことです。レッドパージされた人々は2万人とも言われていますが、これは不当だと長年声を上げてきた人々がいました。兵庫県在住の3名が、日本弁護士連合会(日弁連)に対し申し立てたレッドパージによる解雇は人権侵害だとの人権救済申立に対し、日弁連は、昨年2008年10月24日付けで、国等に画期的な勧告をしました。勧告は、3名がいずれも日本共産党員として免職・解雇されたことは「特定の思想・信条を理由とする差別的取扱いであり、思想良心の自由、法の下の平等、結社の自由を侵害するものであ」り、このため3名は、同人らに「非があるかのように取り扱われその名誉を害されただけでなく、生活の糧を失うことにより苦しい生活を強いられるなどの被害を被ってきた。このような人権への侵害は、いかなる状況下においても許されるものではなく、1952年平和条約発効後は、被害回復措置を容易に行うことができたにもかかわらず、これを放置してきたことの責任は重い。」と断じ、国に対し、3名の被った被害の回復のために、名誉回復や補償を含めた適切な処置を講ずるように勧告しました。

3名は、レッドパージによる解雇後苦難の人生を歩んできましたが、日弁連の勧告を契機に最後の気力をふりしぼって訴訟を提起する決意をしました(提訴2009年3月27日、第1回期日6月11日)。平均年齢88.3歳(最年長92歳)という、調べたわけではありませんが、もっとも高齢の原告団による訴訟ではないかと思います。原告らの人生は、あと十分な時間が保証されているものではありません。非常識は違憲・違法な論理ではありますが、レッドパージを容認した最高裁大法廷の判決も大きな障害としてあります。しかし、司法の一大汚点をぬぐい去るためにも、長年放置されてきたレッドパージによる犠牲者たちの名誉を回復し必要な補償をさせなければなりません。皆さんのご理解とご協力をお願いする次第です。


裁判員制度が始まります?!

2009新年号事務所ニュースより

弁護士 前哲夫

新年5月21日から、重罪事件の刑事裁判には職業裁判官に有権者から無作為に選出された裁判員が加わった(通常は職業裁判官3人、裁判員6人)合議体による裁判が実施されることになっています。刑事裁判の判断に一般市民の良識を反映させることは、欧米各国でそれなりの差異はありながらも行われていることで、それ自体は歓迎されることです。しかし今の裁判員制度設計は、決して好ましいものではありません。

例えば、第1に、長期間代用監獄(警察のブタ箱)等に身柄を拘束して自白を迫る人質司法は何ら改善せず、拷問等の有無・程度を点検するための取り調べの全過程をビデオに撮って見られるようにすることも実施されていませんから、誤判の元が解消されないままです。

第2に「裁判員裁判に向けて」刑事訴訟法が「改正」され、すでに裁判員裁判でない裁判で実施されていますが、そこでは1.公判前整理手続において検察官の手持ち証拠の全面開示は認められず、2.公判前整理手続終了後の被告人・弁護側の新たな主張立証が制限を受けることになり、3.検察官開示証拠の目的外使用禁止(被告人の支援者の現地調査も?)が罰則を伴って強制されています。

第3に刑事裁判の一番の原則は「疑わしきは罰せず」であり、アメリカの陪審制度でも裁判長は公開の法廷でこれを陪審員にはっきりと説示するのに、裁判員制度では公開の法廷ではされず、法定外で職業裁判官が説明する文案にもそれをはっきり伝える明文は入っていません。

第4に裁判員や候補者に守秘義務や出頭義務を刑罰付きで強制しています。このような問題点は、実施前に解消されるべきですし、仮にそのまま実施されたとしても引き続き改善を求めていくべき課題となります。


休職の報告

お知らせ

弁護士 宮地奈央

第一子出産のため、平成20年11月より産前・産後休暇をいただき、引き続き1年間の育児休暇に入っております。そのため、本年1年間は弁護士業務をお休みさせていただく予定です。 出産・育児という経験を通じて人間的により成長し、復帰後は心新たに弁護士業務に取り組む所存です。 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。


「1人で悩んでいませんか?」

2009新年号事務所ニュースより

弁護士 増田正幸

世界金融危機の影響で平成20年暮れには「派遣切り」など解雇・雇止めで失業した非正規雇用の労働者が3万人を超えるという報道がなされました。中でも派遣期間中の中途解約が7割も占めているのが特徴です。また、新規学卒者の内定取消も相次いでいます。残業割増賃金の不払いや職場におけるいじめなども横行し、労働者を使い捨てに使用者の横暴に怒り、傷つく労働者が増えています。そのため労働局の労働相談件数は年々増加しています(平成19年度では全国で198000件、兵庫県で8700件)。しかし、訴訟になる件数は年間2200件程度です。日本の6割しか人口がいないドイツの労働裁判が年間60万件を超えるのとは対照的です。

裁判には時間や費用がかかることがその一因でしたが、平成18年度から労働審判制度が開始されました。労働審判とは、裁判官1名と労働組合や使用者団体から選任された労使各1名の専門委員の3名で構成される労働審判委員会が、労使双方から事情を聴取するとともに、調停(話し合いによる紛争解決)を試み、調停が成立しない場合には「労働審判」(訴訟における判決に相当するもの)を出す制度です。原則として、3回以内の期日で審理を終結しなければならないことになっていて、申立てから3ヵ月程度の間に解決が図られるので、利用件数がどんどん増えており、いまや労働裁判の主流になりつつあります。

日本の労働組合は正規労働者中心であったために非正規労働者が労働組合の力を借りる機会がありませんでしたが、最近は個人加盟という形で勤務先の異なる労働者が1人で加入できる労働組合があちこちで結成されて、労働者の権利の擁護のために活動しています。泣き寝入りする前に一度、組合や弁護士に相談してみませんか。


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