事務所ニュース

◆バックナンバー

2008年


青年ユニオン誕生の意味

2008新年号事務所ニュースより

弁護士 増田正幸

「構造改革」は、日本の社会を弱肉強食社会に「改革」しようとするものです。政府財界はそのために自衛隊の海外派兵をもくろみ憲法9条を変えようとしていますが、実は同時に「弱者切り捨て」のために憲法25条も骨抜きにしようとしていることを忘れてはなりません。小泉内閣の5年間で、企業収益は1.44倍、役員報酬は1.9倍、株主の配当は2.6倍、大企業の内部留保が3.3倍になるなど大企業や資産家が潤っているかげで、正社員は約300万人減り、その代わり非正規社員が約350万人増えました。貯蓄0世帯が12パーセントから23パーセントに増え、生活保護世帯は1.39倍になるなど格差がどんどん拡大しています。

非正規労働者の中にはフルタイムで働いても生活保護基準以下の収入しかない労働者(「ワーキングプア」)が増えています。賃金が低いだけでなく、使い捨てにされ、残業未払い、社会保険・雇用保険未加入など違法状態が蔓延しています。そこで登場したのが「青年ユニオン」です。職種や職場を問わず地域で働く若者が誰でも加入できる労働組合で、当面の目標を法律で認められた最低限の権利の保障に絞って活動をしています。

ワーキングプアの存在は、現在の社会が、真面目な勤労努力に対して報いる能力を持たなくなってしまっていることを示しています。そして「青年ユニオン」の活動はそのような社会の歪みを告発する運動として広く共感を呼び、マスコミも注目しているのです(兵庫県でも2007年9月1日に「兵庫青年ユニオン 波」が結成されました。


事件報告 証券取引被害…証券会社と和解

2008新年号事務所ニュースより

弁護士 深草徹

主婦であるAさんは、ある証券会社に取引口座を新設して、地方公共団体の公債を購入し、その口座に預けていました。ところが数年後、証券会社の担当者が交代してから、頻繁に売り買いをなされるようになりました。それも公債から投資信託や株式へ、更には国内ものから為替リスクのある外国ものへ、株式も上場株式から店頭株式へと、全般によりリスクの大きいものへ、より複雑で、知識経験のない者には理解できないものへシフトするようになりました。

問題のある6年間を抽出すると取引回数は300回を超え、この間の証券会社の取得手数料は、計算できた分だけでも500万円を大幅に超えていました。

Aさんは、自分の知らないうちに売買が繰り返され、損害を被ったと主張。訴訟では、証券会社は、全てAさんから個別の指示・注文を受けた、説明もきちんとし納得を得た上での取引だったと反論。しかし、1.主婦で証券取引の知識経験のない者にこのように過当な取引を継続させたのは適合性原則に反する。2.証券会社担当者は無断売買もしくは一任売買に近い状況で取引を継続させており、少なくとも説明義務違反がある、との主張に、裁判所も一定の理解を示し、このほど和解により、相当額の損害を回復することができました。


事件報告 「生存権裁判」ー高齢者の生活保障切り捨てを許さないー

2008新年号事務所ニュースより

弁護士 瀬川嘉章

日本国憲法(25条)は、「健康的で文化的な最低限度の生活を営む権利」(生存権)を人権として保障しました。失業、病気、事故、災害、犯罪の被害などで、経済的自立ができなくなるおそれは誰にでもありますが、どのような不幸に遭遇しても人間らしく生きる権利が保証されているのです。

憲法の生存権保障の最後のセーフティーネットとして、生活保護法が、生活保護を受ける権利を具体的に保障しています。同法は、最低限度の生活の需要に基づき保護基準を定めますが、生活の需要は、年齢、性別、世帯構成等によって異なり、老齢者には「特別需要」があります。例えば、消化吸収の良い良質な食品、余分にかかる光熱費、寒気・湿気等に対応する寝具・衣料品、墓参、親戚知人への訪問関係費用などがかかります。そこで70歳以上の高齢者については、「老齢加算」という特別な基準が設けられ、40年以上も高齢者の健康で文化的な生活を支えてきました。

ところが、国は、平成15年になって突然、老齢加算の廃止を決めました。国が理由とするところは、第1/10分位(収入階級を10層に分けた場合の一番所得が低い層)の消費水準との比較、60から69歳の年齢層の消費支出額との比較です。しかし生活保護の補足率が20パーセント程度にすぎず、保護基準以下の生活を送っている人が多い現状で、第1/10分位と比較すること自体が問題です。また、60から69歳の年齢層は退職後間がなく貯蓄があり、住宅や子供の費用もなく消費余力があるので、消費が多いのは当然です。そもそも、これまで存在するとされきた特別需要が突如として消失する理由が不明なのです。

現在、この「老齢加算」の廃止が生存権を侵害する違憲・違法なものであるとして、全国8都道府県で裁判が起こされ、兵庫でも2007年5月16日に訴えを提起しました。2007年の秋の保護基準の切り下げの検討など、今、社会保障費削減を目的に生存権が切り捨てられようとしています。そして、多くの国民が貧困に直面しています。国民的な運動が必要です。ご支援よろしくお願い致します。


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