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危険運転致死傷罪

弁護士 桑原至

平成13年、全国規模で行われた法改正運動に応えるようにして、新たに「危険運転致死傷罪」が成立しました。これにより、「故意」で危険な運転を行い、人を負傷させた場合には15年以下の懲役刑に、死亡させた場合には1年以上(原則最長20年)の懲役刑に処されるようになり、悪質な自動車事故に対する厳罰化がすすみました。

ところが実際には危険運転致死傷罪の適用場面は限定されていて、酩酊運転・制御困難運転・未熟運転・妨害運転・信号無視運転のどれかを「故意」によって行ったことが要求されます。無免許での運転、持病を有する状態での運転、脇見運転、居眠り運転、任意保険未加入状態での運転といったケースは危険運転致死傷罪の対象外で、自動車運転致死傷罪によって処理せざるを得ないのが現状です。それゆえ、「本当の意味で交通被害者の声に応えた立法といえるのか」といった疑問や批判の声が上がっており、適用範囲の拡大とさらなる厳罰化を求める動きも見られます。

とはいえ、「厳罰化以外に交通犯罪を抑制する方法はない」と断言してしまうのも、日本人の道徳意識を全否定してしまうようで少し寂しい気がします。交通事故をなくすためにどのような取り組みをすべきか。容易に答えが導き出せるわけではありませんが、車社会に生きる我々が社会全体で考えていく必要があります。

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