活動報告

◆バックナンバー2010年8月更新分

抜け穴だらけの派遣法改正(案)  弁護士 瀬川嘉章
久々の労働委員会  弁護士 増田正幸


抜け穴だらけの派遣法改正(案)

弁護士 瀬川嘉章

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政府は、3月19日に閣議決定した労働者派遣法改正案を、今年4月6日、労働者派遣法を衆議院に提出しました。この政府案には、大きな問題点があります。

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そもそも、人材派遣業は、戦前に人夫請負業や口入れ稼業などの名で広く行われ、強制労働や中間搾取の温床となっていました。また派遣の場合には、派遣先は、指揮命令はしますが雇用主ではないため、使用者としてに責任があいまいになり、安全面等で労働者の保護や雇用の安定に欠けるという問題点があります。

このような問題点を踏まえ、1947年に制定された職業安定法44条では、原則として労働者供給事業を禁止しました。

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しかし、外注や下請けの形式をとって、実質的には派遣労働が行われているという実態がありました。そのような現状を追認する形で、1985年6月に労働者派遣法が制定されました。

安全面等の労働者の保護や雇用の安定という点で弊害を避けるという観点から、派遣が許されるのは指定された専門業務だけとされました。当初は13業務だったのですが、財界の要求により翌1986年12月には16業務へ、1996年12月には26業務へ拡大されました(その中には果たして「専門」といえるのか疑問のあるものもあります)。そして1999年6月には、港湾、建設、警備、製造業等を残して、派遣対象業務が自由化されました(ただし、港湾、建設、警備、製造業などは禁止業務)。

この自由化も、「専門業務」について拡大解釈が行われ、「専門業務」でないにもかかわらず派遣される(名ばかり専門職)などの実態を追認してきたものといえます。

その後、2004年3月に、製造業派遣が解禁されました。これも製造業において、請負の形で実質は派遣を行っている(いわゆる偽装請負)という違法な実態に合わせた法改正でした。

このように、派遣労働は、違法な実態にあわせて、財界の要求に押される形で、次々と自由化されていきました。

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このような変遷を経るに伴い派遣可能期間にも変更があり、この製造業派遣が解禁された時点において対象業務・派遣可能期間を整理すると、 1、禁止業務(港湾、建設、警備)、 2、専門的26業務(期間の制限なし)、 3、自由化業務(原則1年、3年まで延長可、製造業はここに入ります)ということになります。

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このように、派遣労働は原則自由となりましたが、そもそも、派遣労働は、安全面等の労働者の保護や雇用条件や雇用の安定という点に問題がありました。

このような問題は以前から生じていましたが、2004年3月に製造業派遣が解禁され、長きにわたる不況とリーマンショックを契機とした景気のさらなる悪化に伴い、弊害が爆発的に増加しました。「ワーキングプア」という言葉に代表されるように、働けども働けどもまともな収入が得られず、首を切られて路頭に迷う若者が爆発的に増加しました。2008年10月から2010年5月までに仕事を失った非正規労働者は28万人ですが、そのうち派遣労働者は15万人、そのうち97パーセントが製造業派遣でした。そして、一昨年末の年越し派遣村が注目されるなど、多くの国民に、派遣労働がが問題であるとの認識がもたれるに至りました。

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民主党は、もともと構造改革路線でしたが、昨年の選挙までに既に、失業、貧困、が社会問題になっていたこともあり構造改革路線の弊害を是正する政策も公約に盛り込みました。雇用の分野においては、製造業派遣の原則禁止、専門業務以外の派遣は常用雇用、日雇い派遣・スポット派遣の禁止、派遣労働者と派遣先労働者の均等待遇、期間制限を超えた場合の直接雇用みなし制度など、それまでの規制緩和から規制強化の方向へ揺り戻す政策を打ち出しました。

そして、このような政策が、構造改革路線で苦しんでいた国民を含む多くの国民の支持を受けて、民主党政権誕生の大きな要因となりました。

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しかし、その後の審議におけるせめぎあいの結果、最終的に国会に上程された案は、大きな問題点を含むことになりました。

(1)製造業派遣の「原則?」禁止、登録型派遣の「原則?」禁止

製造業派遣の原則禁止、登録派遣の原則禁止は改正案の大きな目玉です。

しかし、いずれも例外が大きく、大きな抜け穴があるといえます。

まず、製造業派遣の原則禁止について、改正案4条1項3号は、上記の通り大きな弊害を生じさせている製造業派遣を禁止するとしています。しかし、「常時雇用する労働者の派遣」(常用型派遣)については、例外として製造業派遣を認めています。この「常時雇用する労働者」という概念が曲者で、厚労省の労働者派遣関係業務取扱要綱では 1、期間の定めなく雇用される者のほか 2、一定の期間(例えば2ヶ月、6ヶ月等)を定めて雇用されている者であって過去1年を超える期間について引き続き雇用されている者又は採用の時から1年を超える期間について引き続き雇用されると見込まれる者」を含むとされてています。「常用」には雇用される「見込み」のある者ですから、製造業に派遣したあと1年を超えて雇用しなかったとしても「見込み」があったという言い訳ができるわけです。そもそも1年引き続き雇用されたからといって、その後も雇用が安定するとは限りません。人数割合という点でも、製造業に派遣されている労働者約55万人のうち「常用」とされる者は35万人と6割以上を占め、この6割は禁止の対象となりません。

次に、登録型派遣の原則禁止について、改正案35条の3は、登録型派遣を禁止するといいながら、専門業務への派遣(全派遣労働者の半数以上を占めます)については登録型派遣を認めるという例外を認めています。しかし、専門業務といっても、「事務用機器操作」「ファイリング」「テレマーケティング」「セールスエンジニア」など専門性の高いとはいえないような業務も含まれているわけで、そのような専門性の高くない業務について登録型が放任されれば派遣労働者の地位が非常に弱いものとなります。また現状「専門業務」拡大解釈されているので(名ばかり専門職)、そのような拡大解釈を前提に、本来専門性が高くない業務に就く労働者が登録型とされることは必至です。このように専門業務について十把ひとからげに登録型派遣の禁止の対象外とすることには大きな問題点があります。

(2)改悪

1、グループ派遣を大幅に認めている

現行派遣法7条は、労働者派遣の役割を「特定の者」に提供することを目的として行うことを禁止しています。このような派遣が認められると、派遣会社がグループ全体の人事部の役割を担い、正社員をグループ会社から退職させ、労働条件を切り下げたうえ、派遣会社の派遣労働者にする方法(派遣置き換え)が可能となります。

この点、改正案23条の2は、派遣会社がグループ企業内の会社に派遣することを8割まで認め、この点は、大きな問題といえます。なお、厚労省によると大企業が持つグループ内派遣会社の約70パーセントが8割を超えているとのことであり、現行法7条に反するような事態を追認する法案といえるでしょう。

2、派遣先の申込業務を撤廃

現行派遣法40条の5は、同一の業務(当該派遣労働者が従事する専門26業務)について、派遣先が3年を超える期間継続して同一の派遣労働者を受け入れている場合に、3年の期間経過した日以降に当該同一業務に労働者を雇い入れようとするときは、当該派遣労働者(同一人)に対して雇用契約の申込みをしなければならないと定めています。つまり専門業務で3年以上勤めている場合は、その同一の業務における次の直接雇用は自分だと期待があるわけです。

しかし、改正法40条の5ただし書は、派遣労働者が期間の定めのない雇用である場合には、この申込義務を撤廃しました。

これでは、専門業務に従事する派遣労働者は、派遣元との関係で期間の定めのない雇用というだけで、永遠に直接雇用の期待をもてないことになってしまいます(派遣労働の固定化)。

(3)不十分な点

改正案40条の6は、 1、禁止業務への派遣受入、 2、無許可・無届の派遣元からの派遣受入、 3、派遣期間制限違反、 4、偽装請負、 5、登録型派遣禁止違反の違法派遣があった場合に、派遣元が派遣労働者に対して労働契約の申込をしたものとみなす、直接雇用みなし制度を創設しています。

しかし、上記以外にも、二重派遣や、事前面接の禁止などの違法派遣がありますが、これらは対象から外れています。また、直接雇用みなし制度の適用の要件として、違法派遣を受け入れることについて故意または過失があったことを要求しています。

また、直接雇用の場合の派遣先での労働条件は、派遣労働者の時の労働条件と同一であるとされています。しかし、派遣労働者の多くが有期であることから、多くの場合は直接雇用とみなされても有期契約の1回目で雇い止めすることが可能となります(日本トムソン事件でも労働局から指導を受けて直接雇をした後に行った雇い止めを有効と判断されています)。派遣先の労働者との賃金格差も残ったままです。

このような直接雇用みなし制度にも多くの不十分な点があります。

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今国会での成立は見込まれませんが、、長妻厚生労働大臣は参議院選挙後の臨時国会での成立を目指すとの発言をしています。今後もNOの意思表示を続け、現改正案を修正させ抜本的改正をさせなければなりません。

(民法協・兵庫県民主法律協会ニュース 2010・6・20)

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久々の労働委員会

弁護士 増田正幸

かつて民法協では不適任は公益委員や労働委員の選任を問題としてとりあげ、37期から41期の労働者委員の選任については連合独占を打破すべく労働者委員選任取消訴訟を行いました。

民法協会員組合が労働委員会で不当労働行為を争うという機会がなかったこともあって、この間は労働委員会の機能不全を問題にするばかりで、ずいぶん長い間、労働委員会から足が遠のいていました。

2009年11月に建交労のカンリク分会の不当労働行為救済申立てをして久々に労働委員会を利用しましたが、労働委員会は少し雰囲気が変わっていました。事件の内容は同分会員でもある秋武さんの原稿に譲ります。

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この間、2004年(平成16年)に労働組合法が改正され2005年(平成17年)1月から施行されています。この改正は、労働委員会の不当労働行為の審査が長期化が著しいことと命令に対して裁判で取り消される率が高いことが問題視された結果でした。

主な改正の内容は次のとおりです。

(1)計画的な審査
1、労働委員会は、審問開始前に、争点・証拠や審問回数等を記載した審査の計画を作成するものとすること。
2、労働委員会は、審査の期間の目標を定めるとともに、目標の達成状況その他審査の実施状況を公表するものとすること。

(2)迅速・的確な事実認定
1、公益委員が合議により証人の出頭、物件の提出等を命ずることができるものとすること。 2、提出を命ぜられても提出されなかった物件については、命令の取消訴訟における証拠提出を制限するものとすること。

(3)和解の促進
1、労働委員会は、当事者に和解を勧めることができるものとすること。
2、労働委員会が作成した和解調書は、強制執行に関して債務名義とみなす等、和解の法的効果について規定するものとすること。

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救済命令の申立てをすると、調査期日が入りますが、本件では以下のように手続が進行しました。審査計画を立てて、早期に期日の予定を入れますし、期日が入りにくければ午前9時に開始するなどして、手続が長期化しないことにずいぶん神経を使っていました。また、和解勧告ができるようになったために、すいぶん積極的に和解を勧めるようになっています。

平成22年 1月18日 調査
2月17日 調査
3月8日 和解・審査計画
4月5日 和解
5月6日 和解
6月17日 審問
7月26日 和解・結審(予定)

について、手続きを迅速に進めたり、和解勧告を積極的に行うことが、時として事案の真相解明をおろそかにする危険を伴うことは裁判所でも経験することなので、事実関係に争いがあったり、背景事実について丹念に立証をしないといけない事案などの場合にそのような運用がなされていっるかについては要注意だと思いますが、団交拒否など事実が簡明で早期の決着を目指す紛争については、もっと労働委員会を利用すればよいように思いました。

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参考までに平成17年以降の兵庫県労働委員会の救済申立て事件についてまとめてみました。

(1)新規申立て事件は次のとおりですが、半数以上が団交拒否事件です。

17 18 19 20 21
件数 7 4 10 7 16

(2)終結事件継続日数の平均は以下のとおりです。

17 18 19 20 21
命令決定 677 367 362 392 315
和解・取下 558 96 88 188 156
総平均 632 258 205 301 196

改正労働法が施行された後、平成18年以降は事件が終了するまでの日数が年々短くなっています。そういう意味での改正法は手続の迅速化には効果を上げていると思います。

(3)平成21年度の継続・新規救済申立て事件の当事者は以下のとおりです。

民法協会員、連合加盟労組(主として自治労)、ユニオンがそれぞれ利用しています。代理人弁護士がつていない事件が多数であり、新規申立て事件数もだんだん増えているようです。

申立人組合 被申立人
全労連全国一般 藤原産業
兵庫労連神戸地域労組 アテック
建交労 テーエス運輸
建交労 カンリク神戸
全港湾神戸支部 フットワーク
全港湾神戸支部2 伊藤運輸
JP労組内個人 郵政事業会社
自治労加古川現業評議会 加古川市教委
自治労尼崎水道労組 尼崎市
自治労全国一般 丸山印刷
武庫川ユニオン 郵政事業会社
武庫川ユニオン ダストマンサービス
武庫川ユニオン セグメント
ひょうごユニオン 住友ゴム
アルバイト・派遣・パート関西 リック
アルバイト・派遣・パート関西 ちふれ化粧品
阪神タクシーセカンドユニオン 阪神タクシー
神戸相互タクシー労組 神戸相互タクシー

(民法協・兵庫県民主法律協会ニュース 2010・7・20)

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